本コラムは、【連山】に 2007年03月13日に投稿したコラムです。
【旧連山コラム】ハイパーインフレ対策としての地域通貨
橘みゆき 2007年03月13日
数度にわたるロシアのハイパーインフレを生き延びた人達は、別荘の家庭菜園で採れた農産物を食べ、お互いに助け合うことで、危機的状況を乗り越えました。
ロシア危機に続いてアルゼンチン危機を調べる過程で、ドルやペソといった通貨とは別に、自分達の地域でしか流通しない地域通貨を使って、お互い助け合うという仕組みを見出しました。
物々交換では不便だから貨幣を使うことにした昔に先祖がえりと言えます。
アルゼンチン政府による預金封鎖
2001年12月1日、アルゼンチン政府は国債の借り換えが終わるまでの間、銀行の預金流出を防ぐため、90日間の預金封鎖を実施しました。
(1) 国民が銀行から引き出せるお金は週に250ドルまで。
(2) デビットカード、クレジットカード、小切手の使用は制限しない。
(3) 海外送金は1日1000ドルまで。
(4) 銀行貸付はドルのみとする。
銀行には預金を引き出すため、行列ができると共に、アルゼンチン全土で暴動や略奪が発生し、アルゼンチンは国全体が大変混乱しました。
アルゼンチン政府は12月23日、公的対外債務の一時支払い停止を宣言した。
当面の生活資金を工面するため、市民が質屋に質草を持ち込み、銀行も質屋をやるようになりました。
財政難を乗り切るために、国や州が独自の債権(ペソでもドルでもありません)を公務員の給料支払いのために使われ、第二の通貨として広まった。
広場で開かれるフリーマーケットでは、物々交換では不便なため、クレジットという単位で、価値が計られる光景が見られた。
お金の先祖返りです。
半年後の2002年6月1日、アルゼンチンのドゥアルデ大統領は、銀行預金凍結措置を段階的に解除すると発表しました。
内容は、ドル預金をペソに強制的に切り替える(為替レートは公定レートのため、預金者によっては大損)や、ペソ建ての国債に切り替えるなど国民の財産は強制的に国に奪われてしまいました。
(かなり途中省略して駆け足でアルゼンチン危機の話をしました)
地域通貨について
私達が普段使っている円(日本銀行券)やドル、ユーロなどのお金は中央銀行が発行していて、法定通貨と呼ばれています。
これと同じものを作ると偽札になるため犯罪となります。
これに対して、地域通貨は、特定の地域(●●村、●●商店街、クレジットカードや商店のポイントカード、オンラインゲームなど)でしか使えません。
江戸時代の藩札も地域通貨の1つです。
地域通貨は、●●円に相当する商品券だったり、●時間分の労働をしたというスタンプを記録した通帳だったり、形は様々ですが、1円=1ポイントの交換レートで表記されます。
皆さんの財布の中には、馴染みのお店や家電量販店のポイントカードや割引券が入っていると思いますが、広い意味でこれらも地域通貨の仲間です。
イメージしやすいように、デパートの商品券やビール券、お米券、図書券などが、そのままの形でやりとりされている光景が、私達にとってイメージしやすい地域通貨の流通形態です。
1時間分の労働=1ポイントといった交換レートを持つ地域通貨もあります。
国家破産時における地域通貨
国家破産時は、インフレが進み、為替レートが円安に進みます。
お金がばら撒かれ、円は紙くずになる一方、ドルやユーロの外貨は預金封鎖により銀行で眠ったままという、アルゼンチン危機に似たような状況を想定しましょう。
(実際はドルやユーロも大きなダメージを受けます)
モノやサービスの売買をする場合、いくらで売ったり買ったりすれば良いのか手探りな状態となった時、みんなよく知っている●●商店街で通用する地域通貨を作って、様々なものに値段を付け直し、必要なモノを作ったり、売ったり、買ったりすれば、安心です。
お互い知合いのため、高値でふっかけたり、安く買い叩くケースは減るでしょう。
地域通貨をみんなでどんどん使うようになると、●●商店街は商売繁盛となり万々歳です。
国家破産で大勢の人が失業しても、各々が自分の得意分野で働いたり、知合いと協力してモノやサービスを産み出すことによって、いくばかりのお金を稼ぐこともできます。
助け合いのツールとして地域通貨が役に立ちます。
アルゼンチンのフリーマーケットみたいに、値段を地域通貨の単位で付け直す作業を行うと、円建てやドル建てだと価格がどんどん変わる場合でも、地域通貨の交換レートを変えるだけで済みます。
周りが騒がしいとき、仲間内だけでうまくやっていこうとする試みということでも良いでしょう。
エネルギーを始め、●●商店街の人達では供給できないものについては、円やユーロなど法定通貨を使って調達しますが、基本的に地域で生産したものを地域で消費しようとするため、エコロジーっぽくなります。
単純に、地域に住む人達が、より豊かに暮らすために、地域通貨という仕組みによる助け合いの輪を作ると、国家破産という事態になっても、影響を少なくすることが可能となります。
昨今の拝金主義者による足の引っ張り合いや、年収120万円前後で生活している人達が増えている中、地域の活性化につながるツールとして、地域通貨を使って見るのも一つの策と言えます。
橘みゆき 拝
Neo-Generation.NETへ再掲載:2009/05/15 橘みゆき 拝
【関連するコラム】
「ロシアの人口減少」 西田知代: 2006/10/30
「ロシアのハイパーインフレ」 橘みゆき: 2007/03/07
【関連するHP】
「経済破綻後も前途多難なアルゼンチン経済」 西島章次:2002/01/07 (Latin America Today)
「地域通貨って何?」Miguelの雑学広場
「地域通貨入門―持続可能な社会を目指して」 著:廣田 裕之
「パン屋のお金とカジノのお金はどう違う?―ミヒャエル・エンデの夢見た経済・社会」 著:廣田 裕之
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